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特許事務所の多様な世界と、私が目指す“社会を支える特許”

特許事務所と一口に言っても、その在り方や価値観は実にさまざまです。私はこれまで複数の特許事務所で実務を経験し、それぞれの方針や考え方に触れてきました。その中で感じたのは、「同じ“特許”という仕事でも、求められる役割や評価軸は事務所ごとに大きく異なる」ということでした。

この記事では、私が歩んできた道と、そこから得た学び、そして現在注力している「障害者を支援する特許」への取り組みについて綴ってみたいと思います。


目次

事務所ごとに違う“特許の価値観”

特許事務所では、基本的には「明細書の作成」や「中間処理」、「調査・出願業務」などが主要業務です。しかし、それぞれの事務所が何を重視し、どう差別化しているかは千差万別でした。私が経験した主な違いは、以下のようなものです。

  • 納期の早さを最重要とする事務所
     とにかくスピード。依頼から数日以内にドラフトを仕上げることが求められることもありました。明細書の内容が正確であることは当然として、時間との勝負という感覚が常にありました。
  • 語学力を重視する事務所
     グローバルに活動する企業を顧客に持つ事務所では、英語、中国語での明細書作成や外国出願対応が重要になります。私はTOEIC940点を取得し、中国語も読み書きはある程度対応可能ですが、発音には苦手意識があります。
  • 営業力を求める事務所
     大手事務所の中には、企業の知財部に対する営業活動まで担当することが求められるところもありました。技術者との打ち合わせ、提案資料の作成、プレゼンなど、まさに“売れる特許”をつくる活動の一環でした。
  • 特許査定率を指標にする事務所
     「査定率90%以上」を目標とし、特許庁における審査対応まで含めて品質管理を徹底しているところもあります。私は常に明細書の質と説得力にこだわり、査定率95%以上を維持してきました。
  • 中小企業支援を重視する事務所
     技術力はあるが知財リソースが乏しい中小企業に寄り添い、資金計画に合わせた戦略を提案する姿勢が求められます。このような現場では、弁理士が“相談役”のような立場になることも多く、やりがいのある仕事でした。

スピードと精度の両立を追求した日々

私は納期を厳守するだけでなく、**「納期よりも前倒しで提出する」**ことを常に意識してきました。早く提出することで、クライアントからの修正依頼にも柔軟に対応でき、信頼につながるからです。

また、語学面ではTOEICスコア940点を取得しており、英文明細書の確認やドラフト作成も行ってきました。中国語も独学で学び、特許文書における用語や構文には対応可能なレベルまで達しました。とはいえ、発音や会話力は課題が残っており、ここは今でも研鑽を続けている部分です。


自らの事務所を運営して見えた景色

こうした経験を積んだ後、私は自ら「テクノフォート国際特許事務所」を設立しました。

この事務所では、主に大手企業の国内出願を中心に業務を行いながら、以下の点に力を入れて運営してきました。

  • 査定率95%以上の維持
     内容の明確さと技術理解の深さを重視し、審査官にも通りやすい構成・表現を工夫してきました。
  • Web広告の活用による集客
     Google広告、Yahoo広告、Facebook、YouTubeなどのプラットフォームを活用し、自社の強みを可視化して発信。検索連動広告を使った特許相談の獲得や、SNSによる専門知識の啓発にも取り組みました。
  • 特許調査と新規発掘
     顧客の潜在的な技術課題をヒアリングから見つけ出し、未出願のアイデアを特許化することで、知財の底上げにも貢献してきました。

現在の取り組み:「障害者を支える特許」へ

今、私が注力しているのが「障害のある方々を支援するための特許」です。
実は私自身、脳の病気をきっかけに失語症という後遺症を抱え、言語の理解や表現に困難を感じる場面があります。

しかし、その経験があったからこそ、「本当に必要とされる技術とは何か?」という視点を得ることができました。

たとえば、言葉が出にくい方のための補助装置や、発作の兆候を検知するデバイス、障害特性に応じたUI設計など、社会の中に“まだないけれど必要な発明”は数多く存在します。

そして、そうした技術を特許という形で守り、広めていくことこそが、今の自分の使命だと感じています。


読みやすく、伝わる明細書を書くために

特許明細書は、「発明を第三者に正しく理解させる」ことが最大の目的です。どんなに優れた発明も、それが誤解されたり、曖昧に伝わったりすれば、権利化できないばかりか、将来のビジネスにも影響を与えてしまいます。

特許事務所に求められるのは、正確で論理的、かつ誤解のない文章を生み出せること。

私はこれまで、「高温で処理された金属部材」という表現を、「金属部材を高温で処理したもの」と書くべきかどうか──そんな細かな違いにも常に注意を払ってきました。なぜなら、文の構造や語順によって、技術的な解釈や意味が異なってしまうことがあるからです。

文章を通して、“技術”と“社会”の橋渡しをする
それが私の考える、弁理士という仕事の本質です。


おわりに:これからのビジョン

これからも私は、**「人の役に立つ特許」**を追求し続けます。
大企業の知財戦略に寄与する特許だけでなく、社会課題の解決や、日常生活の改善につながる“やさしい技術”にこそ、特許制度の力を使いたいと考えています。

そしてそのためには、読みやすく、わかりやすく、誤解のない文章で発明の価値を伝える力が必要です。

これからも、そうした文章を一つひとつ丁寧に書きながら、誰かの“生きやすさ”につながるような知財の形を目指していきます。

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