ドラマ『ばけばけ』の印象的なワンシーン。蝋燭(ろうそく)の薄暗い灯りの中、トキが怪談を語り、ヘブンがそれに耳を傾けています。
この静かでミステリアスな場面ですが、実は2人の脳内では「全く異なるアプローチ」でフル稼働しています。今回は、この2人の脳の働きを「サマタ瞑想」と「ヴィパッサナー瞑想」という2つの状態に例え、さらにそこから見えてくる「プロフェッショナルの仕事術」について紐解いてみましょう。
1. ヘブン(聞き手):一点集中の「前頭前野」
画像の中でヘブンは、じっと蝋燭の炎を見つめ、トキの話に耳を傾けています。
- 行動: 視線と意識を「蝋燭の炎」や「トキの話」という一点に集中させています。余計なことを考えず、ただその対象に向き合っている状態です。
- 脳の働き: これはまさに、脳の司令塔である「前頭前野」が強く働いている状態です。注意をコントロールし、雑念を抑え、一つのことに集中するリソースを動員しています。
- 瞑想に例えると: ひとつの対象に意識を向け続ける「サマタ瞑想(集中する瞑想)」に近い脳の状態と言えます。
2. トキ(語り手):脳全体を使う「ネットワーク活動」
一方、トキは怪談を披露しています。これは、ただ声を出して話すだけでなく、非常に複雑な脳の働きを必要とします。
- 行動: 過去の記憶からストーリーを呼び起こし、適切な言葉を選んで順序立てて話します。同時に、話のトーンや表情で「怖さ」を表現し、ヘブンの反応(息遣いなど)を観察して話し方を調整しています。
- 脳の働き: 前頭前野(構成・順序)、島皮質(感情の表現)、頭頂葉(距離感や身体感覚)、海馬(記憶)、言語野など、脳の複数のエリアが活発に連携しています。
- 瞑想に例えると: 脳のあらゆるセンサーをオンにし、全体をバランスよく使う「ヴィパッサナー瞑想(観察する瞑想)」のように、脳のネットワークが活発に連携している状態です。
何気ない怪談のシーンですが、ヘブン(サマタ的)とトキ(ヴィパッサナー的)の脳は、まるで違う光り方をしながら見事なコミュニケーション空間を作り上げています。
3. プロの脳内:弁理士は「ヘブン」と「トキ」を使い分ける
実はこの脳の働き、知的財産のプロフェッショナルである「弁理士」の仕事にも見事に当てはまります。
① 弁理士の「ヘブン」状態(一点集中・サマタ的) クライアントから技術やアイデアの説明を受けるとき、弁理士はただ漫然と耳を傾けているわけではありません。相手の言葉の波の中から、「どこが本当に新しいのか(新規性)」「何が従来と違うのか(進歩性)」という特許の核(コア)を見つけ出すため、前頭前野をフル稼働させています。雑念を削ぎ落とし、相手の意図という「一点」に極限までフォーカスする姿は、まさにヘブンの状態です。
② 自分の中で起きる「トキ」状態への切り替え(ネットワーク活動・ヴィパッサナー的) 弁理士の仕事の凄さはここからです。「新しい特許を作成する(明細書として文章化する)」という段階に入ると、脳の使い方が切り替わります。抽出した「コアのアイデア」を軸に、過去の特許データ、法律の知識、技術の周辺知識などを複雑に結びつけ、論理的な文章として構築していきます。点と点をつなぎ合わせて全体像を作り上げる、まさにトキのような「脳全体のネットワーク活動」です。
まとめ
特許を生み出す際、弁理士の脳内では「究極の集中力で聞き取る(ヘブン)」と「ネットワークを駆使して新しいものを構築する(トキ)」という2つの高度な脳の使い方が、ダイナミックに切り替わっています。
もの凄く脳のエネルギーを使う働き方ですが、この「集中」と「全体俯瞰」のスムーズな切り替えこそが、新しいアイデアを形にするプロフェッショナルの源泉なのかもしれません。

高次脳機能障害の「困りごと」を発明に。特許で守り、事業に育てる。





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