「英語をシャドーイングしていたら、頭が熱くなった感じがする…」
英語学習者なら、一度はそんな経験があるかもしれません。音声に合わせて即座に英語を発話する“シャドーイング”は、確かに集中力も体力も消耗します。そしてその最中、まるで脳に熱がこもったような感覚になる――。
これは果たして気のせいなのでしょうか? それとも、実際に脳で何かが起きているのでしょうか?
今回はこの「脳が熱くなる」感覚を、脳科学と英語学習の観点からひもときます。失語症を経験した私自身の体験も交えながら、シャドーイングがどれほど“脳に効く”トレーニングかを解説します。
🔁 シャドーイングとは?
シャドーイングとは、英語の音声を聞いた直後に、少しの遅れでそのまま口に出して復唱する学習法です。影(shadow)のように、音声のすぐ後ろを追いかけて発話することから名付けられました。
例えば次のような流れです:
- ネイティブの音声を再生する(例:”I think it’s going to rain today.”)
- すぐに真似して話す(例:”I think it’s going to rain today.”)
単純そうに見えますが、実はこれ、非常に高度な脳活動を必要とするタスクなのです。
🧠 脳が熱くなる理由とは?
1. 聴く・理解する・話すを同時に行う
シャドーイング中、脳では以下のような複雑な処理が同時に行われます:
脳の部位主な働きシャドーイングでの役割聴覚野(側頭葉)音声の認識ネイティブ音声を聞き取るウェルニッケ野言語の理解文の意味を捉えるブローカ野言語の生成英語を組み立てて発話準備前頭前野注意・ワーキングメモリ文の構造や文脈の記憶運動野発声運動の制御実際に英語を発声する
これらをわずか数秒内に連続処理するため、脳はまさにフル回転状態になります。初学者ほど処理に時間と労力がかかるため、「脳が熱い」と感じやすいのです。
2. ワーキングメモリの限界に挑戦している
シャドーイングでは、聞いた単語を一瞬だけ記憶にとどめて話す必要があります。これは**ワーキングメモリ(作業記憶)**と呼ばれる短期記憶機能の働きです。
日本語なら自然にできることも、第二言語ではこの処理が非常に負荷になります。慣れない英語の構文・語彙・音の情報を一時的に保持し、すぐに発話しなければならない。その負荷が「脳が熱い」「汗が出る」「頭がぼーっとする」といった体感につながります。
3. 使っている脳の領域が多い
MRIなどの脳画像研究では、言語処理中には複数の領域が同時に活性化することがわかっています。特に第二言語では、初心者はより広範囲の脳を使って補おうとする傾向があります。
つまり、脳のエネルギー消費が増し、代謝活動が活発になることで、「脳が熱を帯びている」ように感じられるのです。
💡「熱くなる」のは良いサイン!
ここまでの話でわかる通り、「脳が熱い」と感じるのは脳が本気でトレーニング中である証拠です。
- 筋トレと同じで、脳も「使わなければ衰える」「使えば鍛えられる」。
- 英語のシャドーイングは、記憶力・集中力・注意力の改善にも効果があるといわれています。
- 認知症予防の一環としてシャドーイングを推奨する例もあります。
🛑 ただし、無理は禁物!
いくら脳に良いとはいえ、過剰な練習は逆効果になることもあります。
- 頭痛、集中力低下、イライラ感が出てきたら、一度休憩しましょう。
- 1日5~10分程度から始めて、慣れてきたら時間を延ばすのがコツ。
- 難しすぎる音源ではなく、自分に合ったレベルを選ぶことも大切です。
🗣️ 私自身の体験:脳の回復とシャドーイング
私は失語症の当事者です。言葉を話すこと、聞くことが難しくなった経験があります。
そんな中で英語のシャドーイングを取り入れたのは、「日本語と英語を同時に刺激すれば、脳がもっと活性化するかもしれない」と考えたからです。
最初は1分でも脳が沸騰するような感覚がありました。でも続けるうちに、少しずつ「言葉の通り道」が滑らかになるのを感じました。
これはあくまで個人的な感想ですが、「シャドーイングは脳のリハビリにもなり得る」と、私は信じています。
🔁 まとめ
- 英語シャドーイング中に「脳が熱くなる」のは自然なこと。
- 聞く・理解する・話すを同時に行うことで、脳がフル活動状態になる。
- 熱くなる=脳のトレーニングが効いているサイン!
- 無理せず、毎日少しずつ続けることが大切。
🎁 おまけ:おすすめのシャドーイング教材(初級者向け)
- 『英語耳』(アルク)
- NHKラジオ英会話アプリ
- TED Talks(スクリプト付き)
- YouTube「Voice of America」シリーズ
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