こんにちは。弁理士の視点から、特許や起業について分かりやすくお伝えしているnoteです。今日はちょっと特別な中学生の話をしましょう。
母のピアスに憧れて生まれた発明
水野舞さんは現在中学3年生。そして株式会社マイヤリングスの14歳の社長です。
彼女の発明家としての歩みは、小学2年生のときにさかのぼります。母親のピアスに憧れたものの、「耳が痛くなりそうでつけられない」という悩みから、「耳につけないイヤリング」を発想しました。
100円ショップのヘアピンに毛糸を巻き、ビーズや紙ストローで装飾した手作り作品が、後に特許取得製品(特許7016202)となるとは、当時は想像もしていなかったそうです。
弁理士視点:小学生の特許取得の意義
小学5年生で特許取得——これは非常に稀なケースです。特許審査には通常、専門的な審査が行われ、特に「新規性」と「進歩性」という高いハードルを越える必要があります。
水野さんの発明は、既存のヘアアクセサリーとイヤリングを組み合わせたもので、一見単純そうに見えますが、「気づくこと」そのものに価値があった好例と言えます。まさに「発明は需要から生まれる」という典型例ですね。
中学生社長の両立術
現在、水野さんは通信制の中学校に週3日通いながら、会社経営をしています。
- 学校がない日:オンライン打ち合わせ、資料作成
- 週1回:定例会議(役員、弁理士、協業企業と)
- 週末:製品制作
遊ぶ時間も大切にしていて、月1回は友人と映画やカラオケに行くなど、等身大の中学生生活も送っています。
「分からないことはすべて聞く」という経営スタイル
特に印象的だったのは、彼女の謙虚な姿勢です。
「人生経験が少ないからこそ、分からないことはすべて聞く」
これは大人でもなかなかできないこと。特に経営者となると、つい「知ったか」をしてしまいがちですが、彼女は違いました。
周りの大人の知恵を借りながら、最終的には自分で決断する。このバランス感覚が、若き経営者の成功の秘訣なのでしょう。
「10年後の夢」より「今のやりたい気持ち」を信じる
水野さんは「将来の夢は?」という質問が苦手だと言います。
彼女の考え方はとても現実的です:
- 新しいことを始めるときは「1年続けられるか」を基準にする
- まずは今できることから始める
- そこから自分なりの道を見つけていく
弁理士としての感想
水野さんの事例は、知財教育の重要性を改めて感じさせます。
たまたま父親が「これ発明じゃない?」と気づいたことで、特許取得につながりました。もしその気づきがなければ、せっかくの素晴らしい発明も埋もれていたかもしれません。
また、彼女の「メールが苦手」という告白にも共感しました。社会人と中学生の間で揺れる気持ち——それは多くの若い起業家が感じる等身大の悩みです。
最後に:小さな「やってみたい」を形にすること
水野さんのメッセージは明確です:
「自分の中にあるささいな『やってみたい』の気持ちを形にする。それが、自分らしくはたらくための第一歩」
彼女の歩みは、「好き」こそが最強のキャリアデザインであることを教えてくれます。
大きな未来を描くことより、今の小さな「好き」を大切にすること——それが意外なところで、自分らしいキャリアへの道を開いてくれるかもしれません。
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