──音楽習慣が「認知症リスク40%減」につながるかもしれない、という最新研究を知っていますか?
1. 「もう年だから」は、実はもったいない
オーストラリア・モナシュ大学の研究チームが、70歳以上の高齢者1万人以上を約10年間追跡したところ、
- 音楽をよく聴く人は、認知症になるリスクが39%低い
- 楽器をよく演奏する人は、35%低い
- 「聴く+演奏する」の両方をしている人は、さらにリスクが下がる
という結果が報告されました。research.monash.edu+1
この研究は、国際老年精神医学雑誌 International Journal of Geriatric Psychiatry に掲載された本格的なコホート研究で、70歳以上のコミュニティ在住高齢者10,893人を対象に、音楽習慣とその後の認知症発症を統計解析したものです。research.monash.edu
もちろん、「音楽をやれば必ず認知症にならない」という意味ではありません。
それでも、
高齢になってからでも、生活習慣によって脳の未来は変えられるかもしれない
という希望を与えてくれる結果と言えます。
2. なぜ音楽が「脳のトレーニング」になるのか
音楽のすごいところは、同時にたくさんの脳の領域を動かしてしまうところです。
- メロディ → 聴覚野
- リズム → 前頭葉(時間やパターンを処理)
- 感情が動く → 扁桃体(情動)
- 思い出がよみがえる → 海馬(記憶)
- 楽器演奏 → 運動野(指や口の動き)、視覚野(楽譜)、前頭葉(計画・注意)
つまり、1曲聴いている数分間で、脳の広いネットワークがいっせいに働きます。
楽器を弾けばなおさら、「同時処理の負荷」がかかるので、自然と脳の処理能力のトレーニングになるわけです。Neuroscience News+1
研究では、「いつも音楽を聴いている」と答えた人ほど、
- 認知症の発症リスクが低く
- 記憶テストや全体的な認知機能のスコアも高かった
ことが示されています。research.monash.edu+1
3. 懐かしい曲を聴くと、なぜ一瞬で「昔」に戻れるのか
若い頃によく聴いた曲を耳にした瞬間、
- 当時の街の匂い
- いっしょにいた人の顔
- 季節の空気感
まで一気によみがえった経験はありませんか?
これは、音楽がエピソード記憶(出来事の記憶)をつかさどる海馬を強く刺激するため、と考えられています。Neuroscience News+1
今回の研究でも、音楽習慣がある人ほどエピソード記憶の成績が良かったことが報告されています。research.monash.edu
さらに、楽器演奏は
- 合奏・バンド・サークルなどで人とのつながりを生み
- 孤立感やうつ傾向を和らげ
- 結果として認知機能の低下を防ぐ
という社会的な効果も期待できると、別の研究者たちは指摘しています。Neuroscience News+1
「音楽=脳への刺激」だけではなく、
「音楽=人とつながる入口」でもある、ということですね。
4. 軽度認知障害(MCI)にも効果のヒント
今回の論文では、いわゆる前段階の状態である**「軽度認知障害(MCI)」に近い状態**(CIND:認知障害だが認知症ではない)についても分析されています。
- いつも音楽を聴く人は、
→ 認知症リスク39%減だけでなく、CINDリスクも17%減 - 「聴く+演奏する」の両方をしている人は、
→ 認知症リスク33%減、CINDリスク22%減
という結果でした。research.monash.edu+1
つまり、
「ちょっと物忘れが増えてきたかな?」という段階でも、
音楽習慣が“ブレーキ”として働く可能性がある
ということです。
もちろん、これは観察研究であり、「音楽が原因でリスクが下がった」と断言できるわけではありません。
しかし、「副作用もほとんどなく、楽しみながら続けられる生活習慣」であることを考えると、「やってみる価値は高い」と言えるでしょう。
5. 世界で増え続ける認知症。その中で「音楽」が持つ意味
世界保健機関(WHO)によると、世界で認知症の人は2021年時点で約5,700万人。毎年、約1,000万件の新たな発症があるとされています。世界保健機関+1
寿命がのびる一方で、認知症は
- 介護負担
- 医療費・社会保障費
- 本人と家族の生活の質(QOL)
に大きな影響を与える「21世紀の大きな課題」です。ランセット+1
薬剤開発も進んでいますが、
「発症を遅らせる」「進行をゆるやかにする」といった生活習慣レベルの対策が、今後ますます重要になります。
その候補のひとつとして、
- お金もあまりかからず
- 特別な設備もいらず
- 自宅でも施設でも、どこでもできて
- 高齢になってからでも始めやすい
という音楽習慣は、とても魅力的な選択肢と言えるでしょう。ScienceDaily+1
6. 今日からできる「音楽で脳を守る」小さな一歩
ここからは、研究結果をふまえて、
「じゃあ、具体的に何をすればいいの?」という視点でまとめてみます。
① まずは「聴く」習慣から
- 1日1曲でもOK:朝食の時間、散歩の前後、寝る前など、タイミングを決める
- 懐かしい曲を選ぶ:10代~30代のころによく聴いた曲は、記憶を強く刺激しやすい
- ながら聴きでもいい:洗濯物をたたみながら、台所に立ちながらでも効果は期待できます
② 余裕があれば「ちょっとだけ演奏」に挑戦
- キーボードやピアノで片手だけ弾いてみる
- リコーダーやハーモニカなど、シンプルな楽器から始める
- カラオケや「歌声喫茶」のように、歌うこと自体を楽しむのも立派な“演奏”
完璧に弾けなくて大丈夫です。
「指を動かす」「音を出す」「リズムに乗る」——そのプロセス自体が、脳のトレーニングです。
③ 人といっしょに楽しむ
- 地域の合唱サークルや楽器サークルに参加する
- 家族と「懐メロタイム」をつくる
- デイサービスや施設での音楽プログラムに積極的に参加する
研究でも、社会的つながりの維持は認知症リスクを下げる重要な要素とされています。medicalbrief.co.za+1
音楽は、その「つながり」を自然に生み出すツールになります。
7. 注意しておきたいこと
- 音楽はあくまで**「リスクを下げる可能性がある生活習慣のひとつ」**であり、「治療」や「確実な予防法」ではありません
- 耳の病気、心臓・脳のご病気、てんかんなど持病がある方は、
→ 音量や刺激の強さに注意しつつ、気になる場合は主治医に相談してください - 認知機能の低下が心配なときは、
→ 「音楽をやっているから大丈夫」と自己判断せず、早めに専門医に相談することが大切です
8. まとめ──「日常の小さな音」が、脳を守るかもしれない
今回の研究が教えてくれるのは、
認知症のリスクは「年齢」や「遺伝」だけではなく、
自分の日常の選択でも、ある程度変えられるかもしれない
ということです。
- お気に入りの曲を流す
- 若い頃のアルバムを聴き直す
- しばらく触っていなかった楽器を、もう一度ケースから出してみる
そんな、ささやかな行動の積み重ねが、
10年後・20年後の自分の脳を守る「投資」になるかもしれません。
「もう70歳だから」ではなく、
「70歳からこそ、音楽で脳を育て直す」。
そんな視点で、今日の一曲を選んでみてはいかがでしょうか。


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