1.本全体の一番大きなメッセージ
一言でいえば、この本が伝えているのは、
「知識をたくさん集めることよりも、
どう考え、どう育てるかが大事だ」
というメッセージです。
私たちは、勉強や仕事の場で、
- 「情報を覚えること」
- 「正解を早く出すこと」
ばかりを求められがちです。
しかし外山滋比古さんは、それよりも、
- ゆっくり考える
- いったん寝かせる
- あえて忘れる
- ひらめきが育つ「場」をつくる
といったプロセスこそが、創造的な思考には不可欠だと語ります。
2.中心的な概念
(1) グライダー型 vs 飛行機型
本書でもっとも有名なたとえが、この「グライダー」と「飛行機」です。
グライダー型の人
- 他人に引っぱってもらえば飛べるけれど、
- 自力では飛び立てない人。
- 先生・本・会社の指示がないと動けないタイプです。
飛行機型の人
- 自分のエンジンで、
- 自分で考え、自分で飛び立てる人。
- 新しいことを考えたり、ゼロから動き始めることができます。
本書が繰り返し伝えているのは、
「グライダー型」から「飛行機型」へと変わろう
というメッセージです。
(2) 「醸成(じょうせい)」=寝かせることの大事さ
外山さんは、
「アイデアは、すぐに完成させなくてよい」
と強調します。
何か思いついたときに、
- すぐに結論に飛びつくのではなく、
- しばらく寝かせて、熟成させる(=醸成する)
ことで、
- 余計なものが落ち、
- 新しいつながりが生まれ、
- よりよい形にまとまっていく。
ワインや味噌を「熟成させる」イメージに近いです。
「考えにも熟成期間が必要だ」
という発想が、この本の重要な柱になっています。
(3) 「忘れる」ことは悪ではなく、むしろ必要
一般的には、
忘れる = ダメなこと・悪いこと
と考えられがちですが、外山さんの見方は逆です。
- 忘れることによって、
- 本当に大事なものだけが残り、
- 頭の中のごちゃごちゃが整理され、
- 新しい発想が生まれやすくなる。
つまり、
「全部覚えておこう」とするよりも、
いったん忘れて、必要なときに思い出せればよい
という、「忘却のすすめ」です。
(4) 「自分の頭を眺める」=メタ思考
外山さんは、「思考の整理」とは、
ただ考くのではなく、
自分がどう考えているかを、一段上から眺めること
だと言います。
たとえば、
- 自分の考え方には、どんなクセがあるのか
- どういうときに、よいアイデアが出やすいのか
- どういうときに、理解できなくなりやすいのか
こうした
「自分の思考の取扱説明書」
を自分で持つことが、本当の意味での「頭のよさ」だ、という考え方です。
(5) 「授業中心」から「自習中心」へ
本書では、大学教育への批判もはっきりと示されています。
授業で「教えてもらう」ことに慣れすぎると、
- 自分で調べなくなる
- 自分で考えなくなる
という弊害が生まれます。
だからこそ、
- 自習(自分で学ぶこと)を中心にした学び方に切り替えるべき
- 授業はあくまで「きっかけ」や「ヒント」をもらう場にすぎない
という姿勢が大切だと説きます。
ここでもやはり、
「他人に引っぱってもらうグライダー」から
「自分で飛ぶ飛行機」へ
という思想とつながっています。
(6) 情報整理ではなく「発想の整理」
タイトルは『思考の整理学』ですが、
中身はいわゆる「情報整理術」のノウハウ本ではありません。
- メモ術
- ファイルの分け方
- ノート術
といったテクニックの話ではなく、
- アイデアをどう扱うか
- ひらめきをどう育てるか
に重心があります。
たとえば、
- すぐには使えなくても、とりあえずメモして寝かせておく
- 関係なさそうな分野同士を、あえてくっつけてみる
- 「くだらないかな」と感じる案も、すぐに捨てず一度保留にしておく
など、
発想を消さずに育てていくための「整理のしかた」
が、具体的に語られます。
(7) アマチュア精神・未知の分野を歩く勇気
外山さんは、「専門家としてのプライド」にも注意を促します。
一つの分野だけに閉じこもってしまうと、
- 新しい視点が生まれにくくなり、
- 自分の常識に縛られてしまう。
だからこそ、
- アマチュアとして別の分野に入っていく勇気
- 失敗してもかまわないという気持ちで、未知の領域に足を踏み入れる姿勢
が、創造的な思考を育てるうえで、とても大切だと語ります。
3.まとめ:『思考の整理学』の核
最後に、この本の「核」を整理すると、次のようになります。
- グライダーではなく、自分で飛ぶ「飛行機型の頭」になろう。
- アイデアはすぐに完成させず、「寝かせて・忘れて・熟成させる」。
- 自分の考え方を一段上から眺める(メタ思考)ことで、頭の使い方を改善できる。
- 授業やマニュアルに頼りすぎず、自習・試行錯誤・アマチュア精神を大事にする。
- 情報整理よりも、「発想の整理」や「考えの育て方」にこそ価値がある。
知識を増やす本ではなく、
**「自分の頭の使い方そのものを見直す本」**として読むと、
『思考の整理学』は、いまでも古びない一冊だと感じます。


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