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手首の激痛からの脱出──親指シフトが救ってくれた私の仕事人生

30歳の頃、私は特許事務所で特許明細書を毎日のように作成していました。
朝から晩まで、時には夜遅くまでパソコンに向かい、ローマ字入力で大量の文章を打っていたのです。
この仕事は非常に集中力が求められ、また、細かい表現力も必要です。頭と指先の両方をフルに使っていました。

そんなある日、左手首に違和感を覚えました。しびれるような感覚と、指先に力が入らない感覚です。
最初は疲れだと思っていましたが、数日たっても治らず、むしろ痛みは強くなっていきました。
やがて、左手を使うのが怖くなるほど、鋭い痛みを感じるようになりました。

病院で診察を受けたところ、「手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん)」という診断を受けました。
長時間のタイピングにより、手首の神経が圧迫されたことが原因とのことでした。
まさに、パソコン仕事をしている人にとっては「職業病」ともいえる症状です。


目次

手根管症候群とは?

「手根管」は、手首の内側にある小さなトンネルのような空間で、その中を「正中神経(せいちゅうしんけい)」という神経が通っています。
この神経が、長時間の同じ姿勢や繰り返しの動作によって圧迫されることで、指のしびれや痛み、筋力低下などの症状が現れます。

タイピングやパソコン作業を日常的に行っている人は、特に発症しやすいとされています。
私の場合は、左手に集中して症状が出ました。

ローマ字入力では、左手側のキー(A・S・Z・Xなど)を頻繁に使います。
しかも日本語は、1文字を表現するのに2打鍵が必要です。
たとえば「か」は「K+A」、「し」は「S+I」など、左手の負担が大きくなっていました。
それが蓄積して、発症につながったのだと思います。


指が動かない。それは弁理士にとって致命的でした

「特許を書く」という仕事は、日本語を論理的かつ技術的に記述する専門職です。
発明者の意図を正しく理解し、それを法的にも技術的にも成立するよう文章化する必要があります。
そのため、「文章力」や「タイピング能力」は非常に重要です。

しかし、手根管症候群によって左手が思うように動かなくなった私は、仕事のスピードが落ち、集中力も切れやすくなってしまいました。
それは単なる身体的な問題ではなく、職業人としての自信さえも揺らぐ体験でした。


富士通の「親指シフトキーボード」との出会い

そんなとき、ある同僚がこう助言してくれました。

「親指シフトって使ったことありますか?一度試してみたらどうですか?」

正直なところ、最初は懐疑的でした。
「どうせ変わったキーボードでしょ?慣れるのに時間がかかるだけじゃないの?」と思ったのです。

しかし、調べていくうちに、その設計思想に感動しました。

  • 日本語を1打鍵で入力できる
  • 打鍵数が少ないので、指や手首への負担が軽い
  • 左右の手でバランスよく入力できる設計になっている

特に驚いたのは、「親指を積極的に使う」という点です。
ローマ字入力では親指はスペースキーくらいしか使いません。
でも、親指シフトでは、左右の親指でシフトキーを押しながら、他のキーと組み合わせることで、
ひらがな1文字を1回で入力できます。

たとえば「か」は左親指+対応キー、「し」は右親指+対応キーといった具合です。

私はすぐに富士通の「親指シフトキーボード(FMV-KB613など)」を購入し、練習を始めました。

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そして、手首の痛みが消えました

親指シフトの習得には多少の時間がかかりましたが、慣れてくるとタイピングがとても楽になりました。
無駄な手の移動が減り、指や手首への負担も少なくなりました。

何より驚いたのは、手首の痛みが少しずつ軽くなり、再発しなくなったことです。
親指シフトに切り替えたことは、私にとってまさに「仕事人生の再出発」になりました。


通常キーボードとの比較

項目普通のキーボード(ローマ字入力)親指シフトキーボード
入力方式1文字=2打鍵1文字=1打鍵
打鍵数多い少ない
親指の活用少ない多い(主役)
手首への負担高め低め
習得のしやすさすぐ使える習得に練習が必要
長時間作業との相性悪い(疲れやすい)良い(疲れにくい)

今後に活かしたい、私の経験

その後、私は障害を抱えながらも、働き続けるための工夫として「入力方式」にもっと注目するようになりました。
現在は、障がい者や高次脳機能障害を持つ方の支援につながる発明やアイデアを考え、特許としても出願しています。

この「親指シフト」への切り替えも、そうした支援の一環として紹介したいと思っています。
特に、タイピング作業が多い仕事をしている方や、手首・指に痛みを感じている方には、ぜひ知ってもらいたいと考えています。


まとめ

  • 手根管症候群は、タイピングによる過労で起こりうる職業病です。
  • ローマ字入力は打鍵数が多く、手首に負担がかかりやすいです。
  • 親指シフトは、日本語に特化した入力方式で、打鍵数が少なく、左右の手の負担を分散できます。
  • 私自身、親指シフトに切り替えたことで、左手の痛みが軽減し、再発もしなくなりました。
  • 仕事や健康に悩んでいる方にとって、親指シフトは一つの「選択肢」になるかもしれません。

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